ハプスブルク家の黄昏
--衰亡する国家とガバナンス--
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王家・王朝の没落
今日、ヨーロッパで君主制をとっている国は、英国やスペイン、北欧諸国など十指に余るほどしかないが、20世紀初頭には、わずか3カ国を例外として、欧州諸国はすべて王や大公などの君主を国家元首としていた(その例外とは、古代・中世以来の都市国家サンマリノ、永世中立国スイス、度重なる革命を経験していたフランスである)。
つまり、20世紀のヨーロッパ史は、見方を変えれば、王家・王朝の没落の歴史でもあった。その直接の契機は二つの世界大戦であったが、王制衰退の真の原因は、有力な王家が中世以来保持してきた自らの権力と「うまく付き合えなくなった」ということにあると思われてならない。逆に、イギリスなど、今日まで続いている王室は、長い時間をかけて「権力の毒抜き」に成功したからこそ生き残っていると言えるのではないか。
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私物としての国家
ヨーロッパ諸王朝の起源は中世の封建時代に遡るが、その時代には、王領や諸侯領は、そこに住む民衆も含めて王家や諸侯一族の私物と言ってもよかった。戦争はひっきりなしにあったが、傭兵を用いた戦争は、用心棒を雇った地主同士の私闘みたいなものだったといえる。この発想を近代まで引きずった絶対君主は「朕は国家なり」などと言うが、そのような甚だしい公私混同は、100年もたたないうちに手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
革命の波が押し寄せたのだ。
市民革命の時代、それまで自分たちの「私有財産」だと思っていた人民に反旗を翻された王侯貴族たちの驚愕と憤りは、想像するに難くない。飼い犬に手を咬まれるどころか、住処を乗っ取られた上に、命まで奪われたのだから。しかし、領主の「私物」であった人民が主人の気付かぬうちに「国民」へと変貌したとき、「国とは私だ」と頑なに主張する絶対君主の居場所は、既になくなっていたのである。
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