資産家宅でのサロン

 

 

 

「ファミリー」の価値を見つめ直す

とは言え、幸いなことに、ファミリーという考え方そのものが、私たちから完全に失われたわけではありません。

富める者、貧しい者にかかわりなく、家族を大切に思う方々はもちろん大勢いらっしゃいます。また経済の観点からも、中小零細企業を含めればほとんどの企業が実際には家族経営ないし同族経営であって、文字通り家族の愛に支えられています。意外に思われるかも知れませんが、大企業の中で比較した場合、プロの経営者や雇われ経営者をトップに戴く上場企業よりも、同族経営の企業の方が一般に業績が良く、従業員の待遇もよいというデータさえあります。さらに、もはや厳密には同族企業とは言えない上場企業であっても、創業者一族の出身者が経営トップとなったとたんに業績が上向いたという話もあります。

ですから、一見目立たないようですがファミリーという価値は、私たちの心の中に今もしっかりと生きているのだと思います。

ちょっと考えれば明らかなように、家族経営、同族経営という企業形態には資本主義そのものよりも古い歴史があり、そして広い意味でのファミリーというべき集団はおそらくお金の起源よりも以前から存在しているでしょう。そこに受け継がれている伝統的価値が、そう簡単に失われるはずはないのです。

だとすれば、このファミリーという価値をもう一度見つめなおすことで、失われたかに見える「心の豊かさ」を取り戻し、これを広めていくことができるなら、現在の社会に蔓延する「すさみ」の問題を解決することもいつの日か可能となるのではないでしょうか。

これは、現代の日本に生きるすべての人々に考えていただきたいことです。

 

 

心の豊かさ/貧しさは周囲に「感染」する

けれども、ここではとりわけ指導的な地位にある人たち、人々から仰ぎ見られる立場にある人たちに強く語りかけたいと思います。

その理由は、一つには、上に立つ人たちの影響力の大きさです。さらに、人生の経験が豊富で、人の心の表裏を知っておいでの方たちのほうが、かえって理想主義的な考え方に共鳴していただけるのではないかとも考えます。

人の上に立ち豊かな心をお持ちの方は、それが周りに何をもたらしているか、意識はせずとも見ていらっしゃることと思います。きっと周囲の人々も生き生きとされているのではないでしょうか。逆に、もし人の上に立つ立場の人が自分のことしか考えていないとすれば、周囲の人たちは戦々恐々として心のゆとりがなくなり、やはり自分のことしか考えられなくなってしまいます。そのようにして組織に「自分さえ良ければいい」という雰囲気が蔓延してしまうとどうなるでしょう。そんな組織がうまく機能するとは思えませんし、外の社会にも影響せざるを得ないのではないかと思います。

ですから、ここではあえて「理想主義」という言い方をしましたが、これは決して堅苦しい思想などではありません。

心豊かに生きよう、ファミリーという価値を大切にしようということは、平たく言えば、「家族や仲間とともに人生を楽しもう」と言っていることにほぼ等しいのです。

心豊かに幸せであれば、その幸福がきっと周囲の人たちにも感染するだろうということです。周りにニコニコしている人がいれば自分も嬉しくなるのと同じで、きわめて単純なことなのです。

 

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「成功した同族企業経営者家族に受け継がれる「ファミリーの価値」とは何か」

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