国際情勢、政治、経済の先を読む情報源
時代を先読みする庶民たち
1999年、ロシア。突如として首相となって世界の耳目を驚かせ、次いでエリツィンの辞任に伴って大統領代行となり、翌年には大統領に就任したウラジーミル・プーチンが中央政界に忽然と現れたとき、日本人はこの人物について何も知らなかった。日本のマスコミは、彼を「無名の人物」と呼んだ。
ところが、ヨーロッパでは事情が異なっていた。エリツィンの後継者としてのプーチンの登場が報じられるや、即座に「あのKGBか」と反応できる人たちが、欧州には市井にさえ存在していたのだ。
その背景には、「時代を先読みするメディア」の存在を想定しないわけにはいかない。
先見性と絶妙のタイミング
翻って、わが日本では、最近(2006年9月)になって日立製作所の業績の下方修正が報じられ、株価は大幅に下落した。ところが、この老舗有名企業の不調をその数週間前にすでに報じていた雑誌があった。
これを読んでいた者にとって、業績下方修正は驚くべきことではなかった。だが、記事の先見性と絶妙のタイミングには今更ながら驚き、舌を巻かざるを得なかった。正に、「大手マスコミには真似のできない」芸当である。日本のジャーナリズムも捨てたものではないと、このとき見直したものである。
見識もなくただ情報を垂れ流すだけのマスコミ業界にあって、「時代の先を読む羅針盤のようなメディア」が日本にもあるのだと知り、正直、安堵もし、心強くも感じたのである。
大手マスコミの大いなる矛盾
一方、政府の規制を受け、スポンサーや広告主の意向に逆らえない日本の大手マスコミ(放送業界が代表的だが、新聞とて例外ではない)にとって、「言論の自由」はお題目のようなものに過ぎない。取材対象である企業が主要なスポンサーでもあるという根本的な矛盾を抱えるマスコミの報道は、企業のプレス・リリースといった「大本営発表」に当たり障りのないコメントを加えるという域を出ない。このような報道を深読みし、時代の先を読むための脈絡をつかむことなど、ほとんど不可能と言っていいだろう。
しかし、書店では販売されず、広告掲載も極端に少ないメディアでは、それが可能となる。政治的、経済的、その他諸々の圧力やしがらみを自ら断ち切っているからだ。独立してこそ、真に読者と向き合い、その必要とする情報を提供することができるのだが、メディアにとっての「独立」とは、「広告に依存しない」ということである。
時代の先を読むための2誌+3
以下の2誌は、そのようなメディアとして代表的なものであろう。大手マスコミとは異なる姿勢を貫くため、1年から3年単位の定期購読のみ受け付けており(書店では入手不可能)、バックナンバーの注文も定期購読者のみとするなど、厳しく制限されている。いずれも月刊で、価格は1部あたり約1000円と、意外に安いのも、流通を通していないからだろう。
『フォーサイト』(新潮社、休刊)
『選択』(選択出版社)
時代が複雑に見えるのは、表面的で断片的な情報ばかりが大量に伝えられているからである。しかし、複雑なジグソーパズルも、ただ1枚の絵に過ぎないのだ。大手マスコミの流す情報はパズルの細かなピースなのだが、これら2誌は、その絵が結局のところ何を描いているのかを語っている。すなわち、「核」となる情報とその意味であり、それさえ掴めれば物事の脈絡と時代の方向性を知ることができる。
時代の先を読みたいとお考えの方々には、2誌併読を強くお勧めしたい(*)。
*さらに余裕がある場合は、同様のコンセプトの月刊誌として、『エルネオス (ELNEOS)』と『FACTA』というものもある。いずれもこの分野の老舗である『選択』に対抗して創刊されたものだが、私見では、金融情報に力を入れるなど、より独自色を打ち出す必要があると思われる。現状ではライバルたり得ない。
ただし、最近読んだ面白い本に『インテリジェンス 武器なき戦争』(佐藤優、手嶋龍一)というものがあるが、その著者である佐藤氏と手島氏がそれぞれ『エルネオス (ELNEOS)』と『FACTA』に連載しておられるのは興味深い。
また、英語がお出来になる場合は、『The Economist』を併読されれば完璧である。
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